| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-772

可塑的防衛行動はいつも適応的か?:魚捕食のない冬期のフサカ日周鉛直移動

*永野真理子(東大・総合文化),八木明彦(愛工大),吉田丈人(東大・総合文化)

日周鉛直移動(diel vertical migration, DVM)は、海洋や淡水域のプランクトンが昼夜で分布深度をかえる行動である。捕食者がいると、餌生物は昼間暗い湖の深層にいて夜になると採餌のために表層に浮上する行動は、24時間の短いタイムスケールでおこなわれている可塑的な捕食者防衛行動と解釈されている。そのため捕食者がいない水域ではDVMはほとんどみられない。本研究では捕食者が活発でない冬期において、餌生物がDVMをすることが判明し、カイロモンのようなDVM誘導要因がないときに移動行動がみられることはどのような適応的意義があるのか考察した。調査は長野県深見池(最大深度7.75m)で2004年から行い、高密度に生息するフサカ(Chaoborus flavicans)幼虫をのDVMを明らかにした。フサカは、視覚捕食者のプランクトン食魚類を回避する顕著なDVMをみせることが知られている。この湖におけるフサカも、夏期において、主な捕食者であるブラックバスやブルーギルがいるために典型的なDVMを示した。一方冬期においては、魚類の捕食活動は低水温のために抑えられているにもかかわらず、フサカは底泥中から底層7mへの鉛直移動が認められた(2004年12月)。可塑的に誘導される行動には、コストがかかっていると考えられ、捕食者がいないときのDVMは不適応になっているかもしれない。今後はフサカDVMのコストを室内で計測し明らかにしていきたいと考えている。


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