| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-796

アミメアリの行動の実験的検証

*斎藤真志,廣田忠雄(山形大・理・生物)

真社会性昆虫であるアリは、非巣仲間の個体を、巣仲間と明確に識別し、激しく攻撃する。しかし、その攻撃性(敵対性)は必ずしも一定ではなく、観察した個体やコロニーによって大きくばらつく。このバラツキがどのような生理的・生態的要因によって生じるのか、複数の検証が試みられているが、未だ定かではない(Satoh & Hirota 2005)。

本報では、アミメアリ(Pristomyrmex punctatus)を用いた室内実験で、検証を試みた。本種は女王がおらず、雌性単為生殖によって繁殖する。そのため、単一クローンで構成されるコロニーが多いが、近年コロニーどうしの融合などを通じて、複数クローン系統が混在するコロニーが形成されることも分かってきた。本種のコロニーは頻繁に巣移住を行うため、特定の地域にテリトリーを維持する種に比べ、他のコロニーと遭遇する機会も多い。攻撃性は非常に高く、巣場所で頻繁に遭遇する他コロニーを学習し、激しく闘争する行動も観察されている(Sanada et al. 2003)。

本報では、東日本の複数の地域で採集した個体群を、様々な組み合わせで闘争実験を行い、攻撃性の高さを調べた。その結果、本種でも攻撃性の高さには、コロニーレベル・個体レベルで大きくばらつくことが確認された。そこで攻撃性のばらつきが生じる要因として、生態的要因や形態的要因を想定して、検証を試みた。その際、近年アリ類の巣仲間認知に対する影響が報告された生体アミンを用いた実験も行った(Robert et al. 2008)。平行して調査しているコロニー融合や移動性の実験の結果とあわせて、攻撃性に変異を生じさせる要因について考察する。


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