| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-827

東京湾岸人工水路干潟のベントス群集

*柚原剛,風呂田利夫(東邦大・理)

東京湾沿岸埋立地では,旧海岸線と埋立地の間に陸水の排水を目的とした「水路」が造られ,二次的に土砂が堆積しヨシ群落を含む小規模な塩性湿地や泥干潟が形成されている.大規模な埋立による干潟面積の減少により東京湾の干潟生物,特に消失が著しい塩性湿地や泥干潟のベントスにおいて,多くの種で現在でも絶滅あるいは絶滅危惧への進行が続いている.プランクトン幼生分散を前提とした干潟ベントスにとって,人工水路内の各地に局所的に存在する塩性湿地や泥干潟は,規模は小さいものの東京湾干潟ベントスの種多様性保全において重要な空間となっている.本研究では東京湾岸千葉県側人工水路内のこれら干潟や塩性湿地のベントス群集の把握と無機的環境要因を調査した.

調査地は東京湾岸人工水路15カ所で2008年3〜9月の大潮干潮時に各水路につき3回調査を行った.ベントス(付着・固着型ベントス除く)を目視・掘り返し調査により採集し,生息状況を把握した.同時に無機的環境要素として底質酸化還元電位,底質粒度,間隙水塩分,標高,干潟面積などを計測した.今回出現したベントスは腹足類11種,二枚貝類11種,環形動物門9種,節足動物門24種,その他動物門2種の57種であった.東京湾内での希少種として,腹足類でツボミ・ウミニナ・カワザンショウガイ・クレハガイ,二枚貝類でヒメシラトリ・オキシジミ・ヤマトシジミ・ソトオリガイ,節足動物門でハサミシャコエビ・クシテガニ・カクベンケイガニ・ウモレベンケイガニ・アリアケモドキの計13種が確認された.無機的環境要素とベントス相との関係は,ヨシ群落を含む水路と含まない水路で群集組成が有意に異なり,ヨシ群落を含む水路では調査地点間の標高差が大きくなるほど種数が増加し,ヨシ群落を含まない水路では干潟面積の増加とともに種数が増加する傾向が示された.


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