| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-839

河川水辺域における生物の生息・利用状況と環境要因との関係

*宮下哲也,佐川志朗,萱場祐一,青木繁幸,根岸淳二郎,久米学((独)土木研究所 自然共生研究センター)

水辺域(河岸域)とは水域と陸域との中間領域にあたり、陸棲昆虫の生息場所や両生類・甲殻類などの移動経路として重要である。一方、近年の土地利用の進行や災害による治水安全性の向上により、自然の河岸から人為的に改変された河岸域が増え続けている。本研究では、自然の河岸域と改変された河岸域における物理環境特性の違いと生物の生息・利用状況との関連性を把握することを目的とした。調査は三重県を流れる注連小路川において2008年10月に行った。河岸形式の異なる5調査区(空積ブロック護岸、練積ブロック護岸、空石積護岸、自然河岸2箇所)を設定し、各調査区に5本の横断トランセクトを任意に設け、このトランクセクト上に方形区を水際部と法面部の2個所設定した(1調査区につき10方形区設定)。設定した方形区ごとに、粘着トラップおよび見つけ採りによる生物の採取と物理環境特性として土壌の構成材料・硬度、植生状況、湿り気および表面温度などについて計測を行った。採取した生物は飛翔性および非飛翔性に同定し、それぞれと物理環境特性との関係を分類・回帰樹木によって解析した。調査の結果、自然河岸および空石積護岸では非飛翔性が採取された生物の70%以上を占め、反して、コンクリートブロック護岸では飛翔性の割合が50%以上を占めた。また、解析の結果、非飛翔性には法面の湿り気が、飛翔性について温度変動幅がモデルに大きく寄与した。しかし、各物理環境要因の間には相関の強いものがあり、生物の生息・利用状況には物理環境要因が複雑に関連していると考えられた。発表では、これら物理環境特性間の因果分析の結果についても報告する。


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