| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-855

コウノトリの再導入地における餌生物量

*内藤和明(兵庫県立大・自然研),佐藤 直(兵庫県立大・院・環境人間),大迫義人,池田 啓(兵庫県立大・自然研)

2005年からコウノトリの試験放鳥が行われている豊岡盆地において,餌生物の現存量とその季節変化を明らかにするために,主要な採餌環境(水田,水路,畦畔,河川の浅場)において生物量の調査を行った.盆地内に河川7ヶ所,その他の採餌環境は各12ヶ所の調査地を設けた.体長1cm以上の生物を採取の対象とし,水田では0.9m四方のプロット内の,水路では5mないし10mの区域内の生物をタモ網を用いて採取,河川では投網による採取を行った.畦畔についてはカエル類およびバッタ類を対象に,ラインセンサスによる採取を行った.調査回数は2008年5月,6月,9月の3回である.採取した全個体の体長を記録し,サンプリングにより作成した体長と体重の相関式に基づいて体重を推定し,生物量をプロット毎に算出した.

コウノトリが採餌可能と考えられる生物に着目すると次のような結果が得られた.水田におけるプロット当たりの生物量は7.53±2.44(SE以下同じ)g/m2(6月)から0.24±0.21g/m2(9月)で,カエル類の幼生が6月に多く見られた以外は比較的低い値であった.水路における生物量は46.05±15.53g/m2(5月)から4.58±0.89g/m2(9月)と季節変化が大きかった.これはカエル類の幼生や産卵のため遡上した魚類によるものと考えられた.畦畔における現存量は1.22±0.13g/m2(9月)から0.88±0.07g/m2(5月)で比較的安定していたが,9月にバッタ類の現存量が高いことが特徴的であった.河川においては生物量の多くを魚類が占め,平均生物量は3.24±1.28g/m2(5月)から1.95±0.54g/m2(9月)であった.


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