| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-857

淡水産2枚貝カワシンジュガイはどのような生息環境を必要とするか

*長坂晶子(北海道林試),長坂有(北海道林試)

大型淡水産二枚貝であるカワシンジュガイ(環境省RDB指定VU種)は幼生がサクラマス幼魚(ヤマメ)などに寄生しないと生存できないという特異な生活史を持つことから,その保全には宿主となるサケ科魚類にとっても好適な森林渓流が必要である。すなわちその生息環境,餌資源の供給,宿主の存在など流域内の諸条件がそろわなければ個体群を維持できない生物といえ,健全な渓流の指標となりうる貝といえる。カワシンジュガイは,本州ではその生息環境が危機的な状況にあり,僅かに残された生息地で保護,増殖活動が実施されている(例えば広島県など)。開発の歴史が比較的浅い北海道においては,残された良好な生息河川の早急な保全と,危機的状況にある河川の再生が求められるが,北海道ではその存在に関する認識が低いため,分布実態や生息場の条件に関する知見に乏しく,調査研究が急務である。

本研究では,北海道中央部でカワシンジュガイの生息が確認され,宿主(ヤマメ)の生息密度調査が既に実施されている2河川(A川:カワシンジュガイの生息密度が低く絶滅が危惧,B川:保護水面でカワシンジュガイの生息密度が高)を調査対象とした。各河川におけるカワシンジュガイ分布状況,生息密度,サイズクラスなどの基本的なデータを収集したほか,以下の生息環境項目を調査した。

1)生息地の渓流環境要素

・流速,水深,水温,河床礫組成(底質),植生カバー,河川工作物の有無,種類

2)生息地の土地利用情報

・流域の森林率,河畔林率,河畔林の連続性(空中写真判読により把握)

本報告では,これらの環境要素とカワシンジュガイの分布密度からカワシンジュガイ生息のための条件を抽出するほか,絶滅危惧河川と安定生息河川の生息条件に差異についても考察する。


日本生態学会