| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S07-3

ギルド構造視点でどこまで水田生物群集を理解できるだろうか?

日鷹一雅(愛媛大・農・農山漁村)

水田群集の構造・機能を理解する上で、どういう切り口で群集を具体的に解析し理解して行くのかについて考察することは、水田生物多様性の保全や再生事業を合理的に進める上でも重要である。現状では、「イトミミズが増えれば雑草が減り、昆虫や水鳥は増え多様性が増し」であるとか「クモ類が増えれば斑点米カメムシなど害虫が抑制される」「コウノトリ、トキ、タガメなど高次肉食者が増えれば水田生物多様性は増進云々」などと言った記述が知られている。この種の言説は必ずしも理論的な基盤や証拠が確かな説ばかりではなく、今後検証が必要だろう(例えば、企画集会T12アグロエコロジー研究会11)。

ここでは生態学における群集構造解析の視点から、水田群集をよりよく理解する方法について吟味する。群集構造を理解する切り口には、key-stone種、アンブレラ種、そしてギルド等と言った群集構造理解の切り口の仕方があげられるが、ギルド構造については我が国においては従来議論されてこなかった。そこで今回は、ギルド構造の視点から観た時に、どこまで水田生物群集を理解し、保全や再生に役立てることができるのかについて、

1)水稲株や水田雑草のギルド群集(日鷹と中筋 1990;Hidaka 1993;1996など)

2)田面水中の止水性肉食者のギルド群集(Hirai and Hidaka 2003など)など

を題材にして議論を進める。guildsとは元々は同一資源を同じ様に消費する種のグループを言い(Root, 1967)、微小生息地、食部位など重層構造を有し(Kikkawa and Anderson, 1986)、同一層のギルドに種が重なるほど競争は激化するとされている。水田群集においても同様の一般則に従う場合も多く、さらにギルド構造の実態解明に基づいたアプローチへの基礎研究が深められ、群集構造の適切な管理への努力が行われることが重要であろう。


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