| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S08-2

外来病原微生物コイヘルペスウイルスの在来宿主個体群への定着機構

*内井喜美子,川端善一郎(地球研)

コイヘルペスウイルス(KHV)は、コイ(Cyprinus carpio)に致死的な病気を引き起こす病原ウイルスである。1998年、初めて単離・同定されたKHVは、急速に世界中のコイ養殖場に広がり、2003年日本に侵入した。KHVは養殖場にとどまらず自然水域にも侵入し、翌2004年には全国で野生コイの大量死を引き起こした。同年4-7月に、琵琶湖では10万匹以上の野生コイがKHVによって死亡し、2005年以降も毎年、散発的な死亡が確認されている。

2006年の調査より、感染を生き残ったコイ(抗KHV抗体を持つ; 感染耐過個体)の45%からKHV遺伝子が検出された。このことは、感染耐過個体がウイルスの保因者となり、新たな感染源となっている可能性を示した。また、抗KHV抗体を持たないにも関わらずKHV遺伝子が検出された数個体は、ごく最近、新たにKHVに感染したと考えられた。これらの事実から、ウイルスの侵入2年後も、琵琶湖において、KHVの水平感染が続いていることが示唆された。

本講演では、主に、2008年3月から11月にかけて、琵琶湖コイ個体群におけるKHVの季節的な動態を解析した研究を紹介する。様々な実験研究から得られた知見と本研究結果とを併せ、宿主間におけるKHV伝播様式、および、宿主コイ個体群へのKHVの定着機構について考察したい。


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