| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S19-3

地球環境変化予測のための植物機能のモデル化に向けて

彦坂幸毅(東北大院)

大気CO2上昇をはじめとする地球環境の変化は、植物の機能に様々な影響を及ぼすと考えられている。一方、植物機能の変化は、CO2吸収などを通して地球環境にフィードバック的な影響を与える。植物機能の地球環境変化応答を正確に予測することは、植物そのものだけではなく、地球環境の行く末を予測する上でも必要不可欠である。現在、地球環境変化予測はコンピュータシミュレーションを用いて行われているが、最も難しいのが植物をはじめとする生態系の応答である。光合成の生化学モデルや群落光合成モデルなどの発展により、与えられた環境で任意の植物群落がどれだけCO2を吸収し蒸散を行うかを、高い精度で予測することが可能になっている。しかし現在もなお難しいのは、与えられた環境で植物群落の生産構造がどのように変化するかを予測することである。例えば高CO2環境で長期間植物を育成すると、光合成能力の低下や葉面積指数の増加が起こることがある(CO2順化)。このような順化応答は地球環境応答モデルには盛り込まれていない、というより、現在の知見ではモデル化することは難しい。光合成能力の低下にしても、葉面積指数の増加にしても、研究や種によって起こることもあれば起こらないこともある。問題は、我々生理生態学者が、「どのような種・どのような環境条件でどのような形質がどのように応答するのか」といった疑問に充分答えられないことにある。本講演では、どのようなアプローチが有効なのかを議論したい。


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