| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S23-2

トキのエサ場づくりマップの実践と定着

生玉修一(農林水産省・北陸農政局)

農業は、自然の循環機能を利用し、我々の生存に必要な食料などを供給する必要不可欠な生産活動であるとともに、昔から農業の営みが我々にとって身近な自然環境を形成し、多様な生物が生息・生育する上で重要な役割を果たしてきた。

農村においては、水田や水路のほか、雑木林やため池、畦や土手といった多様な環境が連続する中で、農業の営みという人為的撹乱(適度な環境変化)があることにより、カエルやメダカ、ドジョウやアカトンボなど多くの生物の生息を可能にしている。

言うまでもなく、トキが野生に復帰して自然界に定着するためには、その受け皿となる生息に適した環境を整えることが大きな課題であり、ドジョウやカエルなどのエサ生物を含む多様な生物の生息環境を維持・向上させることが重要となる。

北陸農政局では、トキのエサ場となる小佐渡東部地域内全ての水田や水路を対象に、エサ生物の生息密度と関連のある生息環境条件(水深、底泥厚、環境の連続性など)に関するデータを収集・整理し、現況のエサ生物生息可能量を推定した「トキのエサ生物生息マップ」を作成している。

また、農法(減・無農薬栽培、冬期湛水など)と工法(水田魚道や「江」の設置など)を組み合わせた生息環境づくりの実証を踏まえ、水系または集落単位での具体的な改善手法を「トキのエサ場づくりマップ」として地元に提案し、農業・農地部門におけるエサ場づくりの定着に向け、関係機関と連携しながら取り組んでいる。

これらの取組を通じ、将来的には、トキが自然界に定着するとともに、健全で持続可能な佐渡農業が実現されることを目指すものである。


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