| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T04-2

メタ群集と空間スケール

野田隆史(北大・地球環境)

群集生態学の研究史を振り返れば、20世紀の研究者の興味は、局所群集―狭い空間スケールの群集―のパターンとその維持・形成メカニズムに向いていた。これまでの研究から、局所群集は外部からの生物の移入が頻繁に生じている開放系であり、異なる時空間スケールで変化する複数の要因から大きな影響を受けていることが明らかとなった。その一方で、「空間スケールの違いによって群集のパターンとその・形成メカニズムがどのように変化するか?」という問いについてはまだ十分な理解が得られていない。

一方、近年登場した「メタ群集」という考え方は、空間スケールの拡大にともなう群集のパターンとプロセスの変化を扱う新たな理論的な枠組みを与えるものである。メタ群集とは、「生物の移動分散によってつながる局所群集の集合」を意味する。そしてメタ群集を対象とした研究では、(1)局所群集間の生物の移動分散は、局所群集内の個体群動態、種間相互作用、種数や種構成にどのような影響を与えているのか?(2)局所群集内の個体群動態や種間相互作用は、メタ群集全体の種数や種構成にどのように影響するのか? を扱う。しかし、研究は始まったばかりであり、これらの問いに対する回答は今後の研究に待たねばならない。また、理論研究の先行に対し実証研究は乏しいのが現状である。

このような背景に立ち、本講演では、「空間スケールに依存した生物群集のパターンとその維持機構の変化」について、新たな研究の方向性と課題を探ることを通し、スケールを超えた群集の統合的理解について考えてみたい。


日本生態学会