| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-04

内モンゴル草原における植物種多様性と地上部バイオマスの24年間の変動

*唐 艶鴻(国環研),劉 忠齢(内モンゴル大)

草原植物群落のバイオマス量は、群落内植物種の豊富度(種数)、機能タイプの数、植物の生態的形質の多様性や物理的環境の変化によって変わる。実験条件下では、植物種の豊富度の高い草原群落はバイオマス量(生産力)も高いことがこれまで多くの研究で認められている。また、広範囲の地域からの調査結果では、植物種の豊富度が高い草原は地上部のバイオマスも高い場合が多い。しかし、自然環境下では、群落内植物種数や機能タイプ数とバイオマス量の変動についての長期トレントとそのメカニズムは明らかでない。

本研究では、放牧のない内モンゴルの草原で、1982年から2008年までの間(3年の欠測がある)、毎年の生育季節の5月から9月までの間に約2週間の間隔で、毎回20個の1x1mのプロットについて、植物の種数、種組成、機能タイプ、各種の地上部バイオマスの連続測定を行った。

その結果、同じ時期の20のプロットについては、植物の種数または機能タイプの数と地上部バイオマスの間にあまり明瞭な相関が認められなかったが、24年間まはた各年においては、プロット内の種数や機能タイプ数が高い場合は地上部のバイオマスが有意に高いことがわかった。また、構成種の生態的形質の豊富度が高い場合、地上部のバイオマスも高いことが示された。さらに、測定期間中、植物種の豊富度と地上部バイオマスの関係の変化は、物理環境から大きな影響を受けることも示唆された。本研究の解析結果と他の研究からの結果を利用し、内モンゴル草原における植物の種多様性、機能タイプとバイオマスの関係について議論する。


日本生態学会