| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-03

ダムの運用が河畔林の更新動態に与える影響

*高橋まゆみ, 中村太士(北大・農)

ヤナギ科植物を主要樹種とする北海道の河畔林を維持するためには、種子定着場所となる裸地を生成する洪水攪乱が必要である。ダムによる洪水時の流量調節は攪乱頻度や強度を低下させるため、河畔林の更新に影響が出ることが懸念されている。1997年に運用が開始された十勝川水系札内川ダムではダム下流の冠水頻度の低下に伴う樹林面積の増加が報告されている。本研究ではダム運用後の河畔林の種組成を明らかにし、ダムの運用が河畔林の更新動態へ与える影響を検討する。札内川ダム下流17km地点に調査区を設定し、ダム運用後の冠水頻度をもとに、砂礫堆(冠水頻度0-2年), 低位氾濫原(2-20年), 高位氾濫原(20<年)の3つに区分した。各面にプロットを設置し、成木(樹高1.3m<)の胸高直径、更新木(樹高1.3m>)の個体数を計測した。調査結果より、高位氾濫原ではヤナギ科が優占しているが、ヤチダモ、ハルニレなどへ遷移が進んでいることが分かった。氾濫原はダム運用以前は砂礫堆だったがダム運用後に冠水頻度が下がり低位氾濫原となった場所が多く、高位氾濫原で見られたケショウヤナギ、オオバヤナギ、ドロヤナギに加え、林縁部や二次流路ではネコヤナギやオノエヤナギが多く出現した。砂礫堆では、低位氾濫原の成木出現種が更新木として出現したのに加え、エゾノキヌヤナギやエゾヤナギも多く出現した。砂礫堆の植生はダム運用後発芽定着したものと考えられ、砂礫堆はヤナギ科樹種の更新サイトとして利用されていることが分かった。ダム運用後は攪乱強度が低下しており、現在は氾濫原の樹林化とともに砂礫堆の更新木も成長が促進される状態にある。長期的な河畔林の維持を考えると、新たな更新サイトの生成が必要であり、流路変動を伴う攪乱を許容する弾力的なダムの運用が必要となる。


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