| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-06

沖縄本島におけるマングローブ林の構造と河口形状の変化履歴との関係

*竹村紫苑(徳島大・院・建設), 鎌田磨人(徳島大・工), 赤松良久(東京理科大・理工)

マングローブ林は,河口前縁の新規堆積地でのパイオニア種の定着と,洪水・波浪による侵食・破壊を繰り返す.それが成長し始めると,マングローブが土砂を補足して河床の複断面化を生じさせ,遷移後期種の侵入の動因となる.遷移後期種が優占する林分となると,それはギャップ更新で維持されるようになる.そして,最終的に陸生植物との混合林へと推移する.これがFromard et. al (2004)が人為活動の影響が及んでいない場で描いた,マングローブ林の推移に関するシナリオである.

日本では,特に沖縄本島でのマングローブ生育地は河川改修によって改変されている.河口域での流路工事による澪筋の固定化や,河口狭窄部での橋脚の設置は土砂の堆積過程に大きな影響を及ぼしていると思われる.このような改変された河口域で,マングローブ林の構造や地形との対応,また,河川改修の歴史や規模を把握・比較することで,改変されたマングローブ生育地での維持・推移過程が,自然状態からどのように遊離してくるかを把握できると思われる.そのため,沖縄本島の大浦川,億首川,宜野座福地川それぞれのマングローブ林で,最河口部から縦断方向に3つずつコドラートを設置して毎木調査を行い,同時に河床横断面測量を行った.また,1945年〜2005年の空中写真を用いて,河口形状とマングローブ林の空間変化を把握した.

その結果,1)橋の建設に伴い河口幅が縮小した後,最前面のマングローブが河口部に向かって拡大することが確認された.2)上流域に行くほど複断面化が進んでおり,億首川および宜野座福地川ではメヒルギ優占林からオヒルギ優占林へと変化したことが確認された.3)河口最前面の河床断面は河口幅の広い大浦川ほど緩やかで,億首川,宜野座福地川の順に急であった.これらから改変河川でのマングローブ林の健全性について論じる.


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