| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-09

果実食鳥類のFruit tracking? -地域スケールでみた果実生産と鳥飛来数の対応関係 -

*木村一也(金沢大・環日本海セ),田辺慎一(国際自然環境アウトドア専門学校),中村浩二(金沢大・環日本海セ)

果実食鳥類による果実資源の追跡移動(fruit tracking)は、鳥散布植物の種子散布成功に強く影響すると考えられる。fruit trackingが支持されてきた背景には、「果実密度の季節変化に応じた果実食鳥類の密度変化」を示してきた局所的研究の蓄積がある。時間・空間的に予測しにくい果実資源の分布に対して、果実食鳥類は柔軟に移動しながら果実を消費していると推測される。一方、年ごとに動態が異なる、鳥類密度と果実消費量の変化が一致しないなどfruit trackingが支持されなかった例も報告されている。これらの違いを引き起こす主要因として、調査スケールの問題が考えられる。本研究では、局所規模から地域規模(10〜100km)までの果実密度と果実食鳥類密度を定期的に調査し、それぞれのスケールの果実‐果実食鳥類の季節対応パタンを明らかにして、fruit trackingが見出されるスケールの検証を試みた。

石川県北部から南部にかけて点在する10カ所の林分で、2003年から2005年までの秋冬季(9月〜翌1月)にみられた果実と果実食鳥類の密度を調査した。その結果、群集レベルの季節対応は一部の調査地で認められたが、局所的な季節対応を支持するような傾向はみられなかった。同様に、地域スケール(10調査地平均値)でも明瞭な季節対応はみられなかった。これらの結果から、果実食鳥類の移動は果実資源の分布パタン以外の要因によっても決定されると考えられるが、発表ではさらに主要鳥種と利用樹種との直接的な季節対応についても言及しながら、調査スケールと季節対応の関係について考察する。


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