| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-08

渓流に供給される落葉の飛散における距離と量との関係

*金指 努(名大・生命農学),服部 重昭(名大・生命農学)

渓畔林から供給される落葉は、渓流生態系にとって系外からの重要な養分供給源と考えられている。しかし、渓流に供給される落葉の飛散距離と量の関係についての研究は少なく、また、上層木からの供給に限定されていて中・下層からの供給についてはほとんど考慮されていない。渓流生態系の保全にとって、渓畔域の適切な森林管理は重要と考えられるが、まだ情報が不足している。そのため、渓流生態系への養分供給経路を解明するため、渓流に供給される落葉の飛散距離と量の関係について調査した。調査地は、愛知県豊田市稲武町の演習林内を流れる落葉広葉樹林パッチを2箇所選んだ。それぞれの調査地は、水平距離でそれぞれ26.4mおよび29.0mの長さ(縦断方向)の渓流を含んだ。各パッチはスギ人工林の中に存在し、面積の違いからそれぞれ大パッチおよび小パッチと呼ぶ。大パッチでは、落葉広葉樹林が渓流から斜面方向に水平距離で30m以上分布しているのに対し、小パッチでは15m以上になると落葉広葉樹の上層木は失われ、スギ人工林に変化した。飛散距離を測定するため、調査地内の上・中・下層木それぞれの葉群の一定空間(縦1.5m、横1.5m、高さ1m)を着色した。着色箇所は局所に集中しないよう任意に選んだ。また、渓流上にリタートラップ(開口部1.5m-1.5m)を各10個設置し、トラップに落下した着色葉を2008年10月16日から2009年1月6日まで回収した。回収した落葉の乾燥重量を測定し、葉群の単位面積当たりの落葉供給量を計算した。その結果、大パッチでは渓流から水平距離で22m離れた範囲まで落葉供給が確認されたため、小パッチではスギ人工林化によって落葉供給距離が制限されている可能性が示唆された。また、葉群の単位面積当たりの落葉供給量を各層で比較すると、中・下層木も重要な落葉供給源であることが分かった。


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