| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-01

パナマの毒ガエルの体色分化を説明する量的遺伝モデル:配偶者選択はランダムドリフトを強化するか?

*巌佐 庸(九大・理)・Tazzyman, S. (UCL, UK)

中米にすむヤドクガエルDendrobates pumilioは強力な毒をもち、捕食者に対して目立つ体色をする。中米全域では1つの体色タイプが占めるが、パナマのBocas del Toro諸島では、小さな島ごとに体色の異なる約15の表現型に別れている。雄は子の世話は行わず雌による配偶者選択が長時間にわたる。

これに対して同じ諸島に分布する近縁種の毒ガエル2種は、島でも中米本土と同じ体色をしている。これら2種では雄が子の保護を行い、雌による配偶者選択は弱い。

島の個体数は小さいために体色に関するランダムドリフトがはたらく。近縁2種と違ってD. pumilioだけが島ごとに異なる色に分化している理由として、雌による配偶者選択がはたらくとランダムドリフトが強くなるとする仮説が提案されている。

我々はそれを量的遺伝モデルによって解析した。体色を1次元の実数xとし、雌が好む雄の体色をyとする。集団の有限性によるドリフトと自然淘汰・生と歌を表す確率差分方程式を導いた。その結果、「配偶者選択の遺伝分散が体色のものよりも大きく、配偶者選択の効率が高くそのコストが小さい」という状況では体色に関するランダムドリフトが性淘汰によって促進されることがわかった。しかし「配偶者選択の遺伝分散が体色のものよりも小さい」とすると、雌の配偶者選択が体色のドリフトを抑制する。

Tazzyman, S.J., and Y. Iwasa. 2010. Sexual selection can increase the effect of random genetic drift. Evolution (in press)


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