| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K2-04

生育光条件の変化に対するダケカンバの葉の窒素量・色素量や展葉数の変化

*小野清美(北大・低温研)

ダケカンバは先駆樹種であり、春葉と、春葉展葉後に次第に展葉する夏葉を持つ順次展葉型の落葉樹である。本研究では、人工気象室内の弱光下で生育させたダケカンバ苗木を春葉展葉前後の様々な時期に強光に移し、弱光下で展葉した春葉が強光に対する応答を示すのか、春葉の窒素量や着葉期間、夏葉の展葉数が、強光に移す時期によって異なるのかを調べた。春葉展葉前に強光に移し、強光下で春葉が展葉した場合、弱光下のまま、あるいは春葉展葉後に強光へ移した個体に比べ、春葉を長く保持している傾向が見られた。春葉展葉後かつ夏葉展葉前に強光へ移した個体では、春葉は早い時期に落葉するものの弱光下より夏葉の展葉数が多くなる傾向が見られた。強光へ移すと、クロロフィル量が減少する一方、キサントフィル量が増加し、その脱エポキシ化の割合も増加するなど、春葉は強光応答を示した。乾燥重量あたりの窒素量は、強光に移すことにより減少したが、葉面積あたりの窒素量は、強光で増加する傾向が見られた。成長の早い時期に強光に移した春葉ほど、これらの強光に対する応答が強く見られる傾向があった。ダケカンバでは、春葉、夏葉の展葉状態によって春葉の強光応答が異なり、さらに夏葉の展葉数が影響を受けることが示唆された。


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