| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-013

岩手県盛岡市日戸地区における草地植生の管理方法の違いが種組成におよぼす影響

島田直明(岩手県大・総合政策)

調査対象地とした盛岡市玉山区日戸地区には姫神山(1123.8m)から南に延びる尾根の西向き斜面に約330haの半自然草地が広がっている。以前は採草地として利用されていた草地で,当時は4月上旬から5月上旬に火入れが,9月中旬から下旬にかけてヤマハギの刈り取りが行われていた。採草利用が行われなくなってからも慣例的に火入れが行われてきたが,十数年ほど前からは行われなくなっている。草地の斜面下側には1998年からオオヤマザクラの植栽が行われ,現在では樹高4−6m程度になっている。オオヤマザクラが植栽されているところは,刈り払いが数年で一巡する程度の頻度で8月頃に地元の方々によって行われている。

対象地の草地を,過去火入れが行われていた(1)サクラ植栽あり・前年の刈り払いあり,(2)サクラ植栽あり・前年の刈り払いなし,(3)サクラ植栽なし(刈り払いなし),および以前から火入れが行われてこなかった(4)未火入れ区の4つの区域にわけ,それぞれの区域の谷・斜面・尾根に50mのトランセクトを2本設置した。それぞれのトランセクトに10m間隔で2m四方の方形区を設け,植生調査を行った。調査は2005年10月,2009年8月から9月に行われた。得られた結果を草地管理の方法ごとに整理し,種組成を比較した。

サクラ植栽のある二つの区ではススキの被度が低くなりオオヨモギ,オオイタドリ,ワラビ,ヤマハギなどの優占する群落が多くなった。これらの区では近年は刈り払いが夏季に行われているため,ススキの生育に影響が現れたと考えられる。また刈り取り直後では草地性種が減少し,荒地に出現する種が多くみられた。刈り払いから数年経つと,これらの種群からススキ草地の種群へと変化していった。一時的には草地性種の欠落が起きるものの,草地維持のために刈り払いが,効果があることが示唆された。


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