| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-029

下部谷壁斜面における木障刈り後の植物個体群再生様式

*小泉恵佑(明治大・農),倉本宣(明治大・農)

生業としての農業活動により成立している半自然草原として、丘陵地の下部谷壁斜面に成立する刈取り草原が挙げられる。このような刈取り草原は、農作物への日照の確保を目的とした刈取り管理(木障刈り)によって維持されており、植物相の種多様性が高い空間であることが明らかにされている。しかし、下部谷壁斜面に生育している植物群落が木障刈りという人為的撹乱の中で、どのように個体群を維持しているのかを調査した事例はない。そこで本研究では、下部谷壁斜面に生育する植物個体群が、木障刈り後にどのように個体群を再生させるのかを明らかにすることを目的とした。

調査は神奈川県川崎市麻生区黒川の北西向き下部谷壁斜面にて行った。この斜面は例年夏期に1回、地際高での木障刈りが地元農家によって行われている。調査対象の斜面にて1m×1mの調査区を24個設置し、木障刈り前後にBraun-Blanquetの全推定法に基づく植物社会学的調査を行なった。加えて木障刈り後の調査では、各調査区の出現種ごとの個体再生様式(種子繁殖or栄養繁殖orその両方)についても調査した。

結果は合計81種(木障刈り前:67種、木障刈り後:63種)の植物を確認した(不明個体は除く)。出現種は、ススキクラス標徴種のアキカラマツ、シラヤマギクに加えて、ヤマユリやフデリンドウといった雑木林構成種が確認された。個体群再生様式を集計すると、一年生草本は、木障刈り後の光環境改善に伴い「種子繁殖」による個体群の再生を行っていた。一方、多年生草本は限られた種のみが「種子繁殖」もしくは「種子繁殖と栄養繁殖」による個体群の再生を行っており、それ以外の種については「栄養繁殖」のみでの個体群の再生であった。これらの原因として、斜面立地による種子の流失や夏期の木障刈りによる種子生産への影響等が考えられる。


日本生態学会