| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-035

浸食作用の卓越する山地集水域における森林構造と地形の対応

*北川涼 酒井暁子 近藤博史 大野啓一(横浜国立大学・院・環境情報)

活発な浸食作用によって複雑な地形が形成される地域に成立する森林の構造は、地形形成プロセスに伴う攪乱と地形によって生じる環境勾配の影響を強く受けている。

そのような地域の地形と植生の関係は丘陵地で詳細に検討されており、尾根上には気候的極相林を構成する遷移後期種が分布し、下部谷壁斜面には攪乱に適応したと考えられる種が分布することが明らかにされている。しかし、丘陵地に比べて複雑な地形が広域にわたって形成されている山地では地形が森林構造に及ぼす影響について、流域機能の単位である集水域スケールで検討した例は少ない。そこで本研究では、神奈川県西部の丹沢山地において以下の調査解析を行った。

2009年に西丹沢中川流域西沢集水域(300ha)において10×10mの方形区105地点を等間隔に設置した。毎木調査によって得た出現種、胸高断面積などの樹木情報と、GISによって得た地形を表現する集水面積などの変数群との対応について、クラスター分析及び、 CCA等を用いて解析を行った。

その結果、10以上の方形区に出現した29種は分布の類似性から4群に分けられた。各種群間の分布の相違の一部は、地形の凹凸、斜面傾斜などの地形的な要因によって説明できることが示唆された。しかし丘陵地とは異なり、尾根・谷といった単純な地形区分には対応していなかった。山地では複数の環境要因が相互作用しつつ様々な空間スケールで樹木の分布に影響しているため、丘陵地に比べてより複雑な空間パターンが成立していると考えられた。


日本生態学会