| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-103

常緑広葉樹林実生の夏と冬の光環境変動に対する個葉と個体の反応

*河原崎里子12,相川真一1,石田厚1,可知直毅2,田内裕之1(1森林総研,2首都大)

常緑広葉樹林はギャップ更新し,実生はギャップ形成時に被陰から強光下への急激な光環境変動を経験する可能性を一年を通して有する。冬と夏の急激な光環境の変動に対する実生の反応を調べた。シイ・カシ類とイスノキ,クスノキなど14種の実生を被陰下(相対照度 6,16,44%)でポット栽培し,冬と夏に裸地へ移動させた。夏季(8月),裸地へ移動後,Fv/Fmは2週間低下し(強光阻害を受けた),その後,回復に向かった。一方,冬季(1月)に裸地に移動させた個体では,Fv/Fmは2ヶ月にわたって低下し続け,夏季よりも顕著に低い値で,落葉した種もあった(クスノキ,アラカシなど)。最大光合成速度は,落葉しなかった葉については夏も冬もFv/Fmに合わせて裸地に出す前の値に回復した。冬と夏の時期の葉を,恒温下(22℃)で強光照射(1,700 μmol m-2 s-1 1時間)し,一日暗条件におくと,冬の葉は強光照射前とほぼ同程度に回復するが,夏の葉は回復の程度が低かった。冬の葉は実際の環境では強光と低温のストレスを強く受けるが,ストレスを回避する機能を働かせていると考えられた。

個体の相対成長RGRは暗いところ(6,16%)で葉面積比LARに依存し,明るいところ(16,44%)で純同化速度NARに依存した。冬に裸地に出したものは,いずれの明るさに由来するものもRGRはNARに依存するようになったが,夏に裸地に出した植物はRGRの決定要因は被陰区の時と変わらなかった。裸地に出したことによって,RGRがどのように変化したか調べた。夏には6%区由来のもののRGRが高くなったが,それ以外のものは変わらない,あるいは,低下した。冬に裸地に出したものは全般にRGRが低下した。


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