| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-114

直接観察法を用いた樹木葉における気孔開度分布様式の把握

*鎌倉真依(奈良女大・共生センター), 高梨聡(森林総研), 小杉緑子(京大・農),松本一穂(九大院・農)

マレーシア熱帯雨林のフタバガキ科の樹種では、光合成の日中低下と同時に不均一な気孔の閉鎖が生じることが明らかにされており、また、不均一な気孔閉鎖が個葉のガス交換に与える影響の大きさは、気孔開度の分布様式に依存していることが示唆されている。さらに、群落全体の光合成の日中低下量は、不均一な気孔の開閉を考慮したモデルによって説明することができる。従って、森林全体のガス交換量を把握する上でも、実際のフィールドにおいて不均一な気孔の開閉が起こるメカニズムを明らかにする必要性が高まっている。

本研究では、日本およびマレーシアの森林に優先的に生育する樹木を対象として、個葉の気孔開度の分布様式を直接観察法を用いて把握することを目的とした。対象樹種の葉の光合成・蒸散速度の日変化をLi-cor社製のLI-6400を用いて測定し、同時に各時間帯にスンプ液を用いて葉の表皮のレプリカを取り、直後にFAA液で固定した。Keyence社製のデジタルマイクロスコープを用いてサンプルの気孔を直接観察し、画像を解析して気孔の開口幅を算出した。個葉における光合成・蒸散速度の変動と気孔開度の直接観察結果を比較することにより、各樹種の気孔開度の分布様式を明らかにした。その結果、熱帯のフタバガキ科や冷温帯落葉樹のミズナラなど光合成の日中低下が生じる樹種では、bimodalな気孔の開閉が起こり、個葉のガス交換に影響を与えている可能性が高いことが示唆された。現在、この仮説を裏付けるため、観察手法の向上を目指すとともに系統的なサンプリングを行っている。


日本生態学会