| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-117

モハベ砂漠に生育する植物のベタイン類生合成における種間差

*岩永史子, Ailijan Maimaiti, 今田省吾(鳥大・乾燥地研), Kumd Acharya (DRI), 森 信寛, 山本福壽 (鳥大・農), 山中典和 (鳥大・乾燥地研)

植物の多くは、生育環境に起因するさまざまなストレスに晒された際、ベタイン類、糖、およびアミノ酸などを含む代謝産物を蓄積することが知られている。これらの物質は適合物質と呼ばれ、比較的高濃度でも毒性を呈さないとされる。乾燥条件および高塩濃度条件下での適合物質蓄積は細胞の膨圧維持に重要な浸透圧低下に寄与するが、特にベタイン類の生理的機能については酵素活性の維持や膜構造の安定性上昇が指摘されている。一方で、これら適合物質の蓄積パターンは種によって様々であり、分類学的に離れた種で特定のベタイン類蓄積が確認されると同時に、蓄積の確認されない種があることも報告されている。本研究ではアメリカ西南部・モハベ砂漠およびコロラド川流域に生育する植物を対象として、適合物質のうち特にベタイン類の蓄積の有無を調査した。

実験試料はアメリカ合衆国南西部モハベ砂漠およびコロラド川流域に生育する植物種31種を対象とし、ネバダ・カリフォルニア・アリゾナ州で2009年8月17日〜8月27日に採取した。各植物の葉を80℃・48時間乾燥させた後、粉砕、定法に従ってベタイン類の抽出を行った(東条, 2009)。得られた抽出サンプルはキャピラリー電気泳動装置(CAPI-3300大塚電子株式会社)にて分析を行った。分析はグリシンベタイン、アラニンベタイン、γ―ブチロベタインの3種を対象とした。分析したサンプルのうち、ベタイン類の蓄積が認められなかったのは31種中1種のみで、その他の種ではいずれかのベタイン蓄積が認められた。


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