| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-120

冬緑性草本ヒガンバナの光合成特性

*西谷里美(日本医大・生物),中村敏枝(首都大・生命科学),可知直毅(首都大・生命科学)

ヒガンバナは冬緑性の多年生草本で,関東地方における葉の生育期間は10月から翌年5月までの約8ヶ月である。成長と呼吸をあわせた総生産の速度(単位葉面積あたり)が,比較的温暖な秋よりも冬から早春に高いことを,第55回大会で報告した。今回は,物質生産の基盤である光合成の季節変化について報告する。

首都大学(八王子市)の圃場でポット栽培した材料を用いて,2006年11月下旬から翌年の5月上旬まで,およそ1ヶ月間隔で,(1)最大光合成速度(22C,飽和光,370ppmCO2で測定),(2) 光化学系IIの最大量子収率Fv/Fm(夜明け前に測定)(3)単位葉面積あたりの窒素,クロロフィルおよびカロテノイド色素量を測定した。ヒガンバナの葉は,10-11月に急速に伸長するが,今回の測定では,10月に伸長した部位のみを用いた。

最大光合成速度は,1月上旬まで20μmolCO2/cm2・s以上の高い値を示した。その後も4月上旬までは15μmolCO2/cm2・s程度で推移したが,5月上旬には約5μmolCO2/cm2・sに低下した。Fv/Fmは,11月下旬には0.8程度,その後2月にかけて一旦低下したものの4月まで0.7以上の値を維持した。葉の窒素濃度およびクロロフィル濃度は,最大光合成速度と類似の傾向をたどり,11月下旬を最大として季節の進行とともに低下した。一方,過剰な光の熱放散に寄与するキサントフィルサイクルの色素(V, A, Z)は,クロロフィルあたりでは11月下旬に最も低く,2月にかけて増加した後,4月下旬まで維持された。また日中の脱エポキシ化の割合(A+Z/V+A+Z)も同様の傾向であった。


日本生態学会