| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-158

樹木の枝の形態と力学的特性の関係

*南野亮子,舘野正樹(東大・院・理)

陸上植物は重力から逃れられない。特に、木本植物は体が大きくなるため、その分重力の影響も大きくなる。この様な状況下で、光合成によってより多くの資源を獲得するためには、より多くの葉を、自個体の他の枝や他個体の枝の影にならないように配置させなければならない。これを満たすために、縦枝はより高く、横枝は幹からより遠くに伸びることが重要である。

垂直に伸びる枝(縦枝)が座屈の起らない範囲でたわまずに伸びることができるのに対し、垂直でない枝(横枝)では、自重によるたわみは常に起こっている。そのため横枝には、自重によるたわみのためにこれ以上枝をのばしても先端を遠くへやれないような長さ(限界長さ)が存在すると言われている(McMahon 1973)。しかし、McMahonの想定した枝は荷重によって下垂する形であり、実際に野外で見られるような枝とは異なる。実際に野外で見られる枝は先端に行くにつれて上向きに屈曲するか、あるいはまっすぐの形をとっている。このことから、実際の横枝について、McMahonの言う限界長さがあてはまるとは考えにくく、違ったアプローチが必要であると考えられる。

本研究では、横枝がどのような形をとったときに一番コストがかからず枝を遠くに延ばすことができるかを計算し、その場合の荷重前の枝の形を、片持梁のたわみに関する力学的な式をもとにしたモデルを用いて計算した。その結果、枝が荷重後に水平になるような形をとるのが一番コストがかからず、このときの枝の形は上向きに屈曲していた。また、直径が先端に向かって減衰するような枝では、荷重後が水平になるような枝の荷重前の形は、直径が一様な時よりも上に持ち上がる形であることがわかった。


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