| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-235

種子を落として帰巣するオオズアリによる種子散布

*大西義浩(佐賀大・農),鈴木信彦(佐賀大・農)

基本的に発芽した場所から移動することができない植物は、さまざまな種子散布様式を進化させてきた。アリによる種子散布は80科300種以上の植物で確認されている。種子はアリに運ばれることによって、実生間の競争や親子間の競争を回避することができると考えられているが、アリは種子を複数の植物から巣に搬入するため、多くの種子が1つのアリコロニーに集められ、巣周辺の種子密度が高くなり、アリによる種子運搬は種子散布に負の影響をもたらす可能性が考えられる。しかし、アリが種子運搬中に頻繁に種子を紛失すれば、種子はさまざまな場所に分散され、種子散布効果は高まると考えられる。そこで、コニシキソウの種子を運搬するオオズアリとトビイロシワアリによる種子の紛失頻度を調べた。どちらのアリでも種子を入手した場所から巣までの距離が長いほど、運搬中の種子紛失頻度が高くなる傾向がみられたが、オオズアリの方が種子紛失頻度は高かった。また、オオズアリはしばしば種子発見場所から巣へ向かう方向とは反対の方向でも種子を紛失するため、種子紛失範囲がトビイロシワアリより広かった。さらに、土を入れた簡易プールに営巣させた2種のアリに、1000粒の種子を運搬させ、翌年発芽した実生の分布を調べ、種子運搬中の紛失が種子散布におよぼす影響を評価した。アリ不在の実験区では、前年に種子を置いた場所に実生が集中して出現した。トビイロシワアリの実験区では、運搬途中の紛失が少ないため巣口周辺に多くの実生が出現した。オオズアリの実験区では、種子が運搬途中でさまざまな場所で紛失されることによって、広い範囲に分散して実生が出現した。また、オオズアリの実験区に出現した実生の生存率は他の実験区の実生よりも高かった。したがって、オオズアリの種子運搬中の高い紛失率は巣口周辺への種子の集中を軽減し、種子散布に貢献していることが示唆された。


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