| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-270

丹沢大山地域におけるブナ林の時系列変化とその衰退パターンに関する研究

*鈴木透(酪農大), 山根正伸(神奈川保全セ),笹川裕史(国環研)

現在、丹沢山地ではブナ林の衰弱・枯死が進行している。これに対応して、ブナ林の衰退原因に関する知見が集積されつつあるが、ブナ林の衰退に関する長期的変化を定量的に明らかにする手法は確立していない。長期的変化を定量的に把握することは、今後の丹沢山地におけるブナ林のモニタリングや保全対策を講じる際に重要な資料となる。そこで本研究では、丹沢山地において、ブナ林の長期的な変化を評価する手法を検討するために、1970年代から2000年代の多時期の空中写真を用いたデジタル写真測量を行い、ブナ林の変化を捉える指標を検討し、ブナ林の長期的な変化のパターンについて考察することを目的とした。まず、1970年代から2000年代の4時期における空中写真はデジタル化し、オルソ画像とした。次に作成したオルソ画像からステレオモデルを作成し、デジタル写真測量をすることでブナ林の衰退状況の指標を抽出した。今回、指標としてブナ林の高木本数や草地に関係する情報を用いた。デジタル写真測量を用いてブナ林の高木本数や草地に関する状況を把握した結果、高木本数の長期的な変化では、蛭ヶ岳・丹沢山・塔ノ岳では減少傾向を示し、大室山・檜洞丸・鍋割山では高木本数に大きな変化は見られなかった。一方、草地については高木本数と異なる傾向が見られた。例えば、檜洞丸では高木本数に変化は見られないが、草地の面積は増加しておりブナ林の衰退が進んでいると考えられる。これまでブナ林の衰退は檜洞丸・蛭ヶ岳・丹沢山で大きいと言われてきた。しかし、今回ブナ林の衰退機構を広範囲・長期的に把握した結果、ブナ林の衰退の程度は地区により違いがあり、ブナ林の衰退の状況を正確に把握するためには様々な高木本数や草地の面積などの指標を使って時空間的に把握する必要があると考えられた。


日本生態学会