| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-290

長野県上伊那地方の立地環境が異なる水田地域におけるバッタ類群集の構造

*袖川巧,大窪久美子(信大・農)

近年,水田地域では基盤整備や農業技術の変化に伴う,動物群集の質的量的変化が問題となっている。本研究では立地環境が異なる水田地域において,畦畔の代表的な昆虫であるバッタ類群集の構造と立地条件との関係性を解明し,農業生態系における本群集の保全策について検討することを目的とした。

調査地域は長野県上伊那地方において,未整備地域として中山間地の小屋敷と山室,同地域の市街地として神子柴,整備地域として中山間地の上原と同地域の市街地として狐島の計5ヶ所を選定した。各調査地域は直径500mの円内とした。

バッタ類群集の調査はスウィーピング法と目視法を用いた。各調査地域で代表的な畦畔10本を選抜し,各々で1m×1mの方形区を3プロット設定した。また同プロットにおいて植生と立地環境調査(土壌含水率,群落高)を行った。

全地域における総出現種数は13種,総出現個体数は1390個体であった。各地域における出現種数と総個体数は未整備地域・中山間地の小屋敷と山室では9種・463個体と8種・383個体,同市街地の神子柴では10種・259個体で,整備地域・中山間地の上原では7種・128個体,同市街地の狐島では6種・157個体であった。未整備地域の出現種数と総個体数は整備地域より多かった。全地域での共通種はオンブバッタやコバネイナゴ,エンマコオロギ,マダラスズ,未整備地域に特徴的に出現した種はコバネヒメギスやヒメクサキリ,コバネササキリ,ハネナガフキバッタ,ヤチスズ,整備地域ではクルマバッタモドキだった。ヒナバッタは中山間地でのみ出現し,オンブバッタの個体数も市街地より多かった。未整備地域における畦畔の土壌含水率は整備地域より高かった。植生の優占種はイネ科が多く,ついでマメ科やキク科で,種数は未整備地域で高かった。発表では群集と土地利用状況等との関係性について考察する。


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