| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-294

胡楊林の林分構造を用いたオアシス植生の健全度の推定

門田有佳子,吉川賢,坂本圭児(岡大院・環境)

河畔林は水分条件から大きな影響を受ける環境の一つである。特に乾燥地でオアシスを形成する河畔林は利用可能な水分に強く依存している。コヨウ(Populus euphratica Oli.)は乾燥地の河畔林の優占樹種であるが、近年急激に増加したオアシスでの水消費に伴い、コヨウ林の劣化・衰退が懸念されており、現状の把握が急務である。コヨウは急激な乾燥化によって先枯れが発生しやすい。その一方で、乾燥ストレスが解除されると根萌芽を中心とした活発な更新をおこなう。そのためコヨウ林の状態を評価する場合には、樹冠の状態と更新個体の有無が重要である。そこで本研究では、コヨウの個体サイズと樹冠の先枯れの程度から林分構造を分類し、衰退が懸念されている中国北西部の黒河下流域のコヨウ林の状態を明らかにすることを目的とした。

調査は、黒河下流域の西川と東川に自生するコヨウ林で2006年8月におこなった。調査区は川の流れに沿って西川に16地点、東川に29地点を設置した。調査区内に20m×20mの方形区を設置し、そこに成立するコヨウのサイズと樹冠の状態から、林分のタイプ分けをおこなった。コヨウ林は、更新個体のある複層林と、大径木のみの一斉林があった。一斉林は、長期間にわたって更新個体が無い衰退した状態であることが示唆された。複層林の中には、更新個体を中心とした林分と、様々なサイズの胡楊が成立する林分があり、これらは健全な状態であることが示唆された。一方で、更新個体が枯死している複層林は、衰退初期の段階であると考えられた。西川と東川のコヨウ林では、衰退のタイプに違いが認められた。西川では流下するに従ってコヨウ林の衰退が段階的に進行していた。東川では全域で衰退している状態を示し、局地的に健全な状態が出現した。


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