| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-317

ニッチの差異に基づく林木種遷移の解析

藤井新次郎*(九大院・生資)・久保田康裕(琉大・理)・榎木勉(九大・農)

ニッチ仮説では、生物種の分布は生育環境とそれぞれの種が持つ生理的・生態的種特性により決定されると言われている。林分の発達に伴う林木種の遷移は、林内環境の変遷に伴い既存の種が競争や適応により異なるニッチを持つ種に入れ替わることで生じる。本研究では、多様な林木種により構成される亜熱帯林における種のニッチの差異が林木種遷移に及ぼす影響を定量的に解析できるニッチモデルを構築した。今回は、沖縄本島北部の亜熱帯林において皆伐後再生し林齢が異なる林分96プロットで過去に行われた植生調査データを用いた。林分特性として、各林分の林齢、幹密度、標高、斜度、地形区分、林分属性(他の林分との近接関係)などの構造及び物理環境データを計測した。出現種114種の最大樹高、在比重、萌芽率、葉面積、葉厚、葉のCN比などの形態的及び生理的種特性データを採取した。各種の分布確率を林齢傾度で予測する階層ベイズモデルを開発し、遷移系列上での種多様性の動態を予測した。各種の分布モデルのパラメータは、各種の属する科・属と機能特性で階層的に事前分布を設定し、MCMC法により推定した。各種の分布モデルから得られた種毎の分布確率を総和し、林齢に伴う樹木種数の事後分布を推定した。モデルで推定された種数は林齢に伴い増加し、約100年でピークを示し、その後は緩やかに減少した。この予測は観測データとうまく一致していた。


日本生態学会