| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-022

エゴノキ属2種の果実の形質とそれがヤマガラの果実利用に及ぼす影響

*舟橋美帆,長瀬ほなみ,松下泰幸,梶村恒(名大・生命農)

自ら動くことのできない植物にとって、動物による種子散布は分布を拡大して子孫を繁栄させていくための重要な戦略のひとつである。それゆえ、植物は種子散布を行う動物との相互作用を通して、果実の形質を様々に進化させてきた。本研究で扱ったエゴノキ属2種(エゴノキとコハクウンボク)は、ヤマガラという森林性の鳥類によって捕食されるものの、同時に貯食散布もされている。本研究では、両樹種における果実の形態的・化学的特性がヤマガラの果実利用におよぼす影響を明らかにすることを目的とした。

まず、果実の形態的特性として果皮厚、種子体積を、化学的特性として栄養成分、有毒成分(サポニン量、タンニン量)を調べた。次に、樹上の果実の減少過程とヤマガラが果実を利用する時期と量を調べた。最後に、果実と種子(果実から果皮を人為的に除去したもの)を様々な組み合わせでヤマガラに供試する操作実験を行った。

コハクウンボク(以下、コハク)はエゴノキ(以下、エゴ)よりも果皮が薄く、種子が大きいという形態的な違いがあった。種子の栄養成分は樹種間で差がなかった。有毒成分に着目すると、ヤマガラが摂食しない果皮において、エゴではサポニン、コハクではタンニンを含有しており、その濃度は季節的に一定であった。一方、ヤマガラ可食部の種子(胚)では、両樹種ともタンニンのみしか含んでおらず、その減少時期はヤマガラの果実利用時期と一致していた。また、樹上果実におけるヤマガラの利用量はエゴよりもコハクの方が多かった。操作実験の結果、両樹種を果実で比較すると、コハクの方が多く持ち去られた。これに対して、種子で比較すると、両樹種の持ち去り数に差はなかった。さらに、エゴの果実と種子で比較すると、種子の方が多く持ち去られた。このようにエゴよりコハクが好まれたのは、コハクは果皮が薄くサポニンという強い有毒成分を含まないためだと考えられる。


日本生態学会