| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-032

土壌栄養塩の総量と分布様式により変化するマメコガネ幼虫がホソムギの成長に及ぼす影響

*角田智詞,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工)

土壌資源が豊富な場所に可塑的に多くの根を伸ばす植物は、資源を巡る競争に有利だと言われている。しかし、集中分布した根は、地下部植食者による食害を受け易くなりうる。本研究では、この仮説を検討した。

1個体のホソムギを5号鉢に植え、栄養塩総量(富・貧)・栄養塩分布様式(均質・不均質)・マメコガネ幼虫(有・無)を3要因とする栽培実験を乱塊法に則り行った。実生を移植し、24日間栽培した後、半数の鉢には幼虫を一匹入れた。さらに24日間生育し、刈り取り、乾重量を秤量した。

不均質分布では、栄養塩を含む土壌パッチ(N+)に分布した根の乾重量が、栄養塩を含まない土壌パッチ(N-)より有意に大きかった。貧栄養条件と比べて、N+に分布した根の割合は、富栄養条件で有意に大きかった。この条件のみで、N+に分布した根の割合が、マメコガネ幼虫の存在下で有意に減少した。これらの結果は仮説を支持した。

また、富栄養条件では、ホソムギの地下部への分配が、貧栄養条件より有意に小さかった。貧栄養条件では、不均質分布でホソムギの地下部への分配が、均質分布より有意に小さかった。

土壌栄養塩の利用性が高い条件下では、根への分配が減少する応答を植物は示した。これは、光の獲得器官への分配が増加している可能性を示唆する。しかし、根が集中分布する植物や根の絶対量が少ない植物は、地下部植食者による被食の影響をより強く受けうる。そのため、一般的に考えられてきたよりも、土壌資源に対する植物の可塑的応答の有利性は、野外では低い可能性がある。


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