| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-042

飛翔筋2型を持つオオヒラタシデムシの系統地理パターン

*池田紘士(京大・理), 曽田貞滋(京大・理)

昆虫は、かつて飛翔能力を獲得したが、その後様々な分類群において退化が生じている。飛翔能力の退化が生じても、退化の途中段階にある、もしくは飛翔能力に応じて環境に対する適応度が異なる場合には、現存種において、個体群間、及び個体群内で飛翔能力に種内多型が認められる。著者らのこれまでの研究により、シデムシ科のオオヒラタシデムシは飛翔筋2型であることが明らかにされている。本研究では、日本の幅広い地域からオオヒラタシデムシのサンプリングを行い、mtDNAのCOI、II領域842塩基を解読して、遺伝的な分化、及び系統地理パターンを調べた。また、GISによって日本での分布可能な環境と地域を予測した。これらを、飛翔筋を持つ近縁種及び持たない近縁種と比較し、飛翔筋2型種のマクロスケールでの分布変遷の特徴について検討した。その結果、地理的距離と遺伝的距離の間には有意な正の相関が認められ、飛翔筋を持つ種に比べて地理的に分化していたが、その傾きは飛翔筋を持たない種に比べて小さく、分化の程度は小さかった。また、近縁種と比べ、幅広い地域で分布確率が高いと推定された。一般に、飛翔能力を持つ種は、飛翔能力を持たない種に比べ、不安定な環境において有利であることが指摘されているが、オオヒラタシデムシは、河川敷のような撹乱が頻繁に生じるような不安定な環境から、森林のような比較的安定した環境まで、多様な環境に生息し、優占することも多い。飛翔筋2型であることは、多様な環境において比較的有利であり、進出しやすいのかもしれない。また、大半の地点において両方の型が認められ、飛翔筋を持つ個体と持たない個体の割合には明瞭な地理パターンは認められなかった。よりミクロなスケールでの環境条件に対応して飛翔能力を持つ個体と持たない個体の割合が異なる可能性があり、ミクロスケールでの分布については今後調べる必要がある。


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