| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-071

キスゲとハマカンゾウにおける花色の違いの遺伝的背景

*新田梢(九大・院理・生物),坂口祐美(九大・院・生物資源環境科学),三島美佐子(九大・博),小関良宏(農工大・工・生命工),安元暁子(京大/チューリッヒ大),矢原徹一(九大・院理・生物)

花色は送粉者に対するシグナル機能があり、新たな送粉者との関係を進化させると言われている。キスゲ属のハマカンゾウは赤色を帯びたオレンジ色、キスゲは薄いレモン色である。ハマカンゾウはアゲハチョウ媒花であり、キスゲはスズメガ媒花である。よって、昼咲きの祖先種からキスゲへの進化の過程で、アゲハチョウ媒からスズメガ媒への送粉適応に伴って、赤色のアントシアニン色素の欠失とオレンジ色のカロテノイド色素の組成変化が起こったと予想される。そこで、2種における花色の違いの遺伝的背景を明らかにするため、アントシアニン色素とカロテノイド色素に注目し、雑種の表現型の分離解析と色素生合成系遺伝子の発現解析を行った。

アントシアニン色素については、雑種F1は、無か微量であった。雑種F2では、無:有=61:63であったが、量の変異があり、無:微量:淡赤:濃赤=61:33:20:10であった。よって、酵素遺伝子と調節遺伝子の2遺伝子座支配による可能性が考えられる。カロテノイド色素については、雑種F1は中間色であった。雑種F2では、オレンジ色・中間色・レモン色に分離し、中間色が多かった。よって、主要な遺伝子座の関与が示唆され、ヘテロ接合で色素の合成量が減り、中間色になったと考えられる。以上から、アントシアニン色素とカロテノイド色素の合成の抑制は、主要な遺伝子座によることが示唆された。

また、アントシアニン色素とカロテノイド色素の合成系の酵素遺伝子について、RT-PCRで花弁における発現を比較した。その結果、キスゲではいくつかの酵素遺伝子の発現量が減少していた。


日本生態学会