| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-140

捕食者による被食者群集多様性への影響:メタ解析による生態系タイプ間比較

*片野泉, Helmut Hillebrand, 土居秀幸(University Oldenburg)

昨今、保全生態学の立場から、生物の地域的な絶滅が問題となっている。この生物が捕食者であった場合、その捕食者だけでなく、その摂食対象である被食者群集の多様性も減少する恐れがある。なぜなら、捕食者は選択的摂食などを通して、被食者群集の多様性に強く影響していると考えられるからである。本発表では、捕食者の有無による被食者の群集多様性の変化パターンについて、文献データを用いてメタ解析を試みた。メタ解析にはエンクロージャー実験など捕食者の現存量,在不在をコントロールした室内・野外実験データを収集した。そのデータから捕食者の被食者多様性への影響度合い(effect size)をlog response ratioとして算出した。その結果,生態系別(海洋、陸上、陸水など)に捕食者の被食者多様性へのeffect sizeを比較した結果、陸水では他の生態系タイプよりも有意に効果が大きく,捕食者によって被食者多様性が減少させられることが明らかとなった。しかし,陸上生態系では捕食者の被食者多様性への効果はほとんど認められなかった。また,捕食者の種数が増加するに伴って,被食者多様性へのeffect sizeが小さくなることが明らかとなった。この結果は捕食者の多様性を維持することで被食者多様性の劇的な変動を緩和することが出来ることを示唆している。捕食者による被食者多様性への影響の大きさは,Hillebrand et al. (2007) で示された植食者が生産者多様性に与える効果よりも大きかった。このことから,捕食者による被食者群集への効果は,食物網の各段階の中でも特に重要であることが示唆された。


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