| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-156

乗鞍岳におけるハネカクシ科昆虫群集の標高傾度に沿った種構成の変化と季節的発生消長

*淺木宏覚(信大・院・地球生物圏科学),市野隆雄(信大・理・生物)

ハネカクシ科は世界で最も巨大な甲虫群であり、海中と砂漠を除くどんな環境にも分布し、肉食、腐食、菌食など多様な食性を持った種が存在している。その多様な生態とは逆に、詳細な生態的情報は乏しく、定量的な群集組成の報告もほとんどない。本研究では、日本の森林生態系におけるハネカクシ科の垂直分布と季節消長を食性グループごとに明らかにすることで、今後のこの昆虫群の生態的研究のための基礎情報を提供することを目指した。

本研究では、北アルプス南部に位置する乗鞍岳(標高3026m)の標高800mから2400m(標高800〜1600mまでは山地帯落葉広葉樹林、標高1700〜2400mまでは亜高山帯針葉樹林)まで標高100mごとの17地点にトラップを設置し、ハネカクシ科昆虫の垂直分布を6月〜9月にかけてそれぞれの標高で2回ずつ調査した。それと同時に標高800mと1500mの2地点(いずれも落葉広葉樹林帯)において、5月〜10月までの6ヶ月間、ハネカクシの季節消長を1カ月あたり2回ずつ定期調査した。垂直分布、季節消長のいずれにおいても1標高あたり20基のM式Fitを設置し、それを約3日後に回収した。M式Fit とは飛翔性の小昆虫を捕獲するためのトラップでプラスチックフィルム(縦420mm×横597mm)を地表面に立て、そこに飛行中の小昆虫が衝突すると下にあるアルコール溶液中に落下するようになっている。これにより採集された昆虫の5〜7割はハネカクシ科昆虫であった。

結果として、垂直分布調査では約15,000個体の、季節消長調査では約10,000個体のハネカクシ科昆虫がそれぞれ採集された。発表ではハネカクシ亜科を中心とした垂直分布の実態とその制限要因、そして季節的発生消長の特徴を明らかにし、また先行研究と比較しながら標高や植生帯と関連付けた考察を行う。


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