| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-181

ネズミ螺旋線虫の成体性比

*向坂幸雄,岩村幸雄(茨城県立医療大)

寄生生物はその隔離した分布様式から偏った性比をとりうることが知られている。本研究は哺乳動物の体内寄生虫の成体性比を調べ、性比の偏りが見られるのかを検証した。対象であるネズミ螺旋線虫(Heligmosomoides polygyrus)は、げっ歯類の腸管に寄生する体内寄生虫である。ネズミの糞便と共に排出された卵は湿った環境下で孵化し、自由生活を送る感染幼虫は飲み水と共にネズミの体内に取り込まれ、腸管内で繁殖する。消化管寄生虫については、人の免疫応答との関連性を調べるために、感染個体数などを調べた例はあるが、雌雄を区別した感染個体数に関する報告はほとんどみられない。これまで、成虫性比はメスにバイアスしていると思われてきたが、本寄生虫は螺旋状に体を巻く構造をとっており、密集していると複数個体が絡み合うため正確な数が分かりにくい。また交接中の雌雄ペアは一見すると1個体と数え間違いやすい。正確な個体数を知るためには、入念に顕微鏡下で数える必要がある。本研究では学生実習用に動物実験施設で継代飼育しているネズミ螺旋線虫を使い、マウスに経口感染させ、1〜9ヶ月後に腸管内に寄生しているネズミ螺旋線虫の数を雌雄別に数えた。性比はおおむね1:1であったが、寄生数が少ない場合には極端に偏った性比が見られた。


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