| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-195

マルハナバチ類の野生巣における繁殖スケジュールと性比

*井上真紀(環境研),横山潤(山形大・理),土田浩治(岐阜大・応用生物)

外来種セイヨウオオマルハナバチは、温室栽培トマトの授粉昆虫として1991年に導入されたが、北海道で野生化が進行しており、侵入地では在来マルハナバチ類の減少が報告されている。本種の防除対策のためには、野外における繁殖生態に関する情報が必要である。マルハナバチは野生巣の発見が困難であるため、これまで室内飼育巣を用いて研究が行われてきた。しかし、室内実験が必ずしも野外の実態を反映するとは限らない。初期の研究では、マルハナバチ類の室内飼育巣においてはprotandryかつ高いオスバイアスの性比であるとされていが、近年の研究では、マルハナバチ類においてもsplit sex ratioであることが報告されている。一方、外来種の定着には、propagule pressureが重要な役割を果たす。もし、セイヨウオオマルハナバチの野生巣がオスバイアスであれば、propagule pressureが弱いことが予測される。そこで本研究では、セイヨウオオマルハナバチの野生巣における繁殖スケジュールと性比を明らかにするとともに、同地域に生息する在来種ニセハイイロマルハナバチの野生巣についても性比を調べた。セイヨウオオマルハナバチでは、protandrous巣はオス生産に、protogynous巣はメス生産に偏っており、sex split ratioであることが示された。個体群性比は1.40(メス/オス)であり、個体群レベルではメスバイアスであった。成熟巣は、繭数平均376.5、うちメス繭数90.2(22.1%)を生産していた。一方、ニセハイイロマルハナバチもsex split ratioを示したが、個体群性比は0.34でありオスバイアスであった。セイヨウオオマルハナバチは在来種に比べ高いメス生産率を示したが、商品化の過程で人為的選択を受けた結果であると考えられる。


日本生態学会