| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-287

メダカナガカメムシの交尾行動

*洲崎雄,宮竹貴久(岡大院・環境・進化)

メダカナガカメムシChauliops fallax Scott (Heteroptera: Malcidae)は、他のカメムシとは異なる交尾行動を示す。すなわち、本種は他のカメムシのように長時間にわたる交尾器の接合は行わず、オスがメスにマウントし続け、その間に交尾器の挿入を繰り返すという特殊な交尾行動を行う。また、本種の交尾器挿入には持続時間が異なる2つのタイプがあり、オスは短時間の挿入を1〜3回行った後で精子の移送を伴う長時間の挿入を行うことがわかっているが、詳しい交尾行動のシーケンスは明らかにされていない。

一般に、メスが複数のオスと交尾するとき、異なるオスの精子間で卵の受精をめぐる競争、すなわち精子間競争が発生する。精子間競争が発生する可能性があるとき、そのリスクを減少させるためにオスは様々な手段を使う。受精に必要な時間よりも長く交尾を続ける行動は、多くの昆虫、特にカメムシ類で多く観察されている現象で、オスがメスのライバルオスとの再交尾を防いでいると考えられている。

そこで、我々はビデオカメラで本種の交尾行動を撮影し、交尾行動のシーケンスと交尾対持続時間、交尾器の挿入回数を調べた。その結果、本種のオスはメスにマウントし、短時間の交尾器挿入を数回行った後、主に長時間の交尾器挿入を繰り返し、交尾の最後に短時間の交尾器挿入を行うことがわかった。また、交尾対の持続時間と交尾器挿入回数の平均値は、それぞれ約284±48分と8.7±1.0回だった。

さらに、短時間のみ・長時間のみ・短長両方の交尾器挿入を経験させたメスを別のオスと再交尾させたところ、長時間の交尾器挿入を経験したメスは再交尾に対して抵抗を示すようになった。

以上の結果から、本種の長時間交尾の意義と短時間・長時間の交尾器挿入の機能について考察する。


日本生態学会