| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-294

東南アジア熱帯雨林におけるHospitalitermes umbrinusの採餌行動

*三巻和晃, 竹松葉子(山口大・農)

シロアリには直接野外へ採餌に向かう特徴的な採餌行動から「コウグンシロアリ」と呼ばれるシロアリがいる。彼らは地衣類を主な餌としており、餌場でfood ballと呼ばれる餌の塊を作り、巣へと持ち帰る。コウグンシロアリは、採餌個体数の多さおよび移動距離の長さから、森林内の物質循環に大きく寄与していると考えられている。森林内におけるコウグンシロアリ全体の物質循環への寄与を明らかにするためには、森林内に生息する全てのコウグンシロアリの分布や密度および種毎の採餌生態の違いを調べることが必要である。

調査地マレーシア、ランビルヒルズ国立公園には4種のコウグンシロアリが生息している。これら4種の巣および採餌場の分布調査が行われ、生息地内で棲み分けており、この中のH. umbrinusが、完全樹上性であることが明らかになってきた。そこで、初めにこの特徴的な樹上性の種に注目し、採餌行列の詳細な経時変化の観察を行った。観察では、ビデオカメラで採餌行列の開始から終了までを記録し、10分ごとに解析することで、採餌行動の経時変化を明らかにした。また、解析結果から採餌従事個体および運搬food ball重量を算出した。

その結果、解析から得られた各カーストの個体数に基づいて、採餌行列を4つの段階に分けることができ、採餌行列の段階的な経時変化を他種と比較した。本種の一度の採餌行列に従事する個体数はおよそ100,000個体、運搬food ball重量は約10gで、地表を生息域とする種より少ないことが分かった。


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