| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-312

Amata属の配偶行動の解析 〜視覚刺激の重要性〜

*近藤勇介(岐阜大・昆虫生態学研), 中秀司(鳥取大・害虫制御学研), 土田浩治(岐阜大・昆虫生態学研)

カノコガ亜科に属するカノコガ(Amata fortunei)とキハダカノコ(A. germana)は同所的に生息している昼行性の蛾類である。カノコガは早朝(0500-0900)に配偶行動を行い、キハダカノコは夕方(1500-1800)に配偶行動を行っていることが観察されている。カノコガは腹部第一節と第五節に黄色い縞があり、キハダカノコは腹部第一節から第七節のすべてに黄色い縞がある。配偶行動時、雌は腹端から性フェロモンを放出し、雄を誘引することが確認されている。また、両種とも昼行性であることから、雄の探雌行動には性フェロモン以外に視覚的な情報による配偶者認識機構が存在すると考えられる。

これまでの研究で、カノコガの雄は雌標本の黄色い縞を加筆あるいは消去したものに対して、到達時間が長くなり、到達率も減少する傾向が見られた。この結果から、カノコガの雄は長距離では性フェロモンを利用し、至近距離(少なくとも15 cm以内)では嗅覚と視覚の両方を利用して雌に定位することが示唆された。

そこで、今回はカノコガの雄が黄色い縞の本数と面積のどちらを配偶者認識に用いているのかを検証するために黄色い縞の”面積を一定にし、本数を増減させた模型”と”本数を一定にして面積を増減させた模型”を用いて風洞内において行動観察を行った。このとき誘引源としてカノコガ雌の腹部末端節のヘキサン抽出物を用いた。また、キハダカノコでも同様の実験を行い、両種の配偶行動における視覚による配偶者認識メカニズムの詳細を考察する。


日本生態学会