| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-314

ヨツボシモンシデムシに見られる幼虫の非同調な孵化とブルードの齢構成

*高田守(農工大院・農), 佐藤俊幸(農工大・獣),普後一(農工大院・農)

行動生態学及び進化生態学で解明されていない生態の一つに、非同調な孵化(asynchronous hatching)がある。非同調な孵化とは、親が子を養育する生き物において、孵化のタイミングに時間差が見られる孵化の様式のことをいう。非同調な孵化の適応的意義について、近年非同調な孵化が一般的に見られる晩成鳥類を用いて仮説の実証研究が盛んに行われてきたが、未だに一般化された仮説はない。これは適応的な孵化のパターンに関する仮説と非同調な孵化を鳥類特有の生理的制約に付随して見られる副次的形質であるとする仮説とを分けて検証することが困難なためである。

このような現状を打開する一つの方法として、非同調な孵化が見られる鳥類以外の生物を用いて、その適応的意義を解明することが挙げられる。鳥類とは異なる生態を持つ生物を用いて研究を行うことにより、非同調な孵化の適応的意義について新たな知見が得られるものと期待される。

自然選択は非同調な孵化の結果形成される孵化時間の異なる子から成るブルードの生存率や繁殖成功といった適応度を、最大化するような孵化のパターンを選択するものと考えられる。従って、非同調な孵化が生理的な制約により起きている現象ではなく、適応的意義を持つ形質なのであれば、その意義を反映した齢構成のブルードが形成されるものと推測される。本研究では、非同調な孵化の適応的意義について調べるため、親が継続的に給餌しながら子を育てるという点において鳥類と似た生態を持つヨツボシモンシデムシ(Nicrophorus quadripunctatus)を用い、孵化のパターンとブルードの齢構成との関係、及び、ブルードの齢構成が適応度の指標である幼虫の成長や生存に及ぼす影響について検証した。


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