| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-317

振動を介したカブトムシ幼虫の集合性

*小島渉(東大・農学生命),高梨琢磨(森林総研),中野亮(理研BSI),石川幸男(東大・農学生命)

カブトムシ幼虫は、腐葉土や堆肥置き場などから狭い範囲で多数の個体が見られることがある。これは、メス成虫が同一のパッチに多数の卵を産むことが一因と考えられる。野外におけるパッチ内での幼虫の分布を調べたところ、実際に集中分布をしていることがわかった。幼虫の移動分散能力を考慮すると、この集中分布には、メスの産卵習性だけでなく、幼虫個体間の集合性が関わっている可能性がある。そこで、幼虫の定位行動について選択試験をおこなった。ここでは、移動の制限された幼虫(定位源)を腐葉土の入った直方体の容器の左右一方に設置し、容器中央に置いた幼虫の定位行動を観察した。その結果、幼虫は定位源となる個体に対し、有意に誘引されることがわかった。さらに、定位源である幼虫の数を増やすことで、この誘引性は強まった。以上より、野外で観察される集中分布には、幼虫の個体間相互に作用する集合性の関与が示唆された。現在、誘引に関わる要因(cue)として振動等を想定し、解析を行っている。それらの予備的結果もあわせて報告する。


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