| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-043

東南アジア熱帯における林業活動が多孔菌類の多様性に及ぼす影響

山下 聡(京大)・服部 力(森林総研)・吉村 剛(京大)

東南アジア熱帯における林業活動が多孔菌類の多様性に及ぼす影響 

山下 聡(京大)・服部 力(森林総研)・吉村 剛(京大)

菌類は植物との共生関係や生物遺体の分解過程を通して森林生態系の物質循環において重要な役割を果たしている。また,菌類は種多様性が高く,その群集構造は森林の状態をよく示すとされ,指標生物としても注目されている。ところで低緯度地域の森林では生物多様性が極めて高く,保全上の価値が大きいことが指摘されているにもかかわらず,伐採や植林といった林業活動が盛んに行われ,生物多様性の減少が懸念されている。そこで筆者らは,東南アジア熱帯地域において,従来型伐採,低インパクト伐採およびアカシア植林が多孔菌類群集に及ぼす影響を原生林との比較により明らかにすることを目的とし,マレーシアおよびベトナムで野外調査を行った。

マレーシア国サバ州デラマコット保護林内にある従来型伐採区(3林分),低インパクト伐採区(4林分)および非伐採区(4林分)に40m×50mのプロットを設置し,多孔菌類の採集を行った。また,マレーシア国サバ州ケニンガウではアカシア植林地(3年生,4年生,6年生,18年生各1林分)および伐採林内に残された非伐採林(2林分)において各林分につきライントランセクト(4m×60m)を3本設置し,多孔菌類の子実体を採集した。ベトナム国ではビンフック省のアカシア植林地(4年生,9年生)およびドンナイ省のナムカッティエン国立公園(2林分)において,ケニンガウと同様にして多孔菌類を採集した。採集された子実体は種まで同定した。

その結果,アカシア植林および従来型伐採では非伐採林よりも種多様性が低かった。また一部の低インパクト伐採区においても種多様性の減少が認められた。発表ではこれらの結果を踏まえ,木材を利用する生物の種多様性を保全した熱帯林管理について考察する。


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