| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-046

葉緑体DNA情報を利用した日光白根山シラネアオイ個体群特定マーカーの開発

*墨谷祐子(栃林セ),上野晴子(栃県東環森),天谷正行(栃農試),崎尾均(新潟大・農)

シラネアオイ(Glaucidium palmatum)は、日光白根山に大群落を形成していたが、近年シカの食害等により個体数が減少し、栃木県版のレッドデータブックでは絶滅危惧I類(Aランク)に指定されている。しかし、生育地域である北海道から本州中部の多くの地域においては普通種であり、観光誘致、鑑賞目的に利用するため、流通・植栽がなされている。現在自生地において遺伝子がかく乱される要素は少ないが、将来的に保全対策を考える上で日光白根山としての地域個体群の遺伝情報を蓄積することが必要であると考える。

これまでに、日光白根山個体群から23個体、他の栃木県内5地域、福島県1地域、群馬県2地域から採取した野生個体55個体と、日光市内に植栽された北海道由来とされる10個体をRAPDマーカーにより分類し、大きく6つのクラスターを形成することを明らかにしたが、白根山個体群とその他の地域を明確に分類するには至らなかった(上野ら、2007)。そこで、一般に母性遺伝すると考えられる葉緑体DNAを利用して、白根山個体群を特定できるマーカーの開発を試みた。

本研究では、これまでの解析に使用した野生個体55個体と、北海道由来とされる10個体および新潟県佐渡島から入手した4個体を白根山個体と比較した。葉緑体DNAの遺伝子間領域16か所で塩基配列を解析したところ、trnK-matK-trnKtrnS-trnG領域において個体群を区別できる塩基多型を見出すことができた。特に、trnK-matK-trnK間の多型はCAPSマーカー化することにより、北海道由来個体とそれ以外の地域の個体を識別するマーカーとなった。今後は採取地域を拡大し、より正確に白根山個体群を特定するマーカーの開発を行いたい。


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