| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-060

糞DNAを用いたケラマジカの起源と遺伝的多様性の解析

*山城明日香(徳島大・院・先端技術)・山城考(徳島大・院・ソシオアーツアンドサイエンス)・鎌田磨人(徳島大・院・ソシオテクノサイエンス)・遠藤晃(佐賀大・院・農)

ケラマジカは、沖縄県慶良間諸島に生息するニホンジカの1亜種である。ケラマジカは約370年前に薩摩から移入されたとされているが、その起源については不明な点が多い。また、一部の生息地で国の天然記念物に指定されていることや個体数も少ないことから集団レベルでの遺伝的解析はこれまで行われていない。本研究では、ケラマジカの起源を明らかにするとともに島内での遺伝的多様性や島間での遺伝的分化、遺伝的交流について明らかにするため、糞DNAを用いて遺伝的解析を行った。解析に用いた糞サンプルは、阿嘉島30個、慶留間島10個、外地島8個、屋嘉比島11個である。それらについてミトコンドリアDNAのD-loop領域と8つのマイクロサテライト遺伝子座について解析を行った。また、ケラマジカの起源を明らかにするために、鹿児島県姶良町、薩摩町、宮崎県霧島市、えびの市、熊本県山都町などで駆除された個体についても同様の解析を行った。D-loop領域の解析結果、ケラマジカには2つのハプロタイプが見られた。屋嘉比島でみられたハプロタイプは、九州南部で幅広く見られるハプロタイプと一致した。決定した塩基配列からネットワーク系統樹を作成した結果、阿嘉島、慶留間島、外地島のハプロタイプは薩摩町の集団に近いことが明らかになった。また、マイクロサテライトから各集団間の遺伝的距離を計算した結果、D-loop領域と同様の結果が得られた。さらに、ケラマジカの集団は九州南部集団に比べると遺伝的多様性のパラメータの値が低く、慶良間4島の集団間、慶良間と薩摩町の集団間について遺伝的分化は見られないことも明らかになった。


日本生態学会