| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-082

絶滅危惧植物センリゴマの全残存集団を対象とした網羅的遺伝解析

*兼子伸吾(京大院・農),大庭俊司(磐田農高),井鷺裕司(京大院・農)

センリゴマRehmannia japonica (ゴマノハグサ科) は、中国から持ち込まれ、江戸時代には園芸品種として広く栽培されていたと考えられている多年生草本である。現在、センリゴマの生育が確認されているのは静岡県内の2ヶ所に限られており、主な生育環境である段々畑の石垣の改修や園芸用採取により個体数が減少していることから、絶滅危惧IA類に指定されている。しかし、生育地付近の住民には希少な植物という認識はなく、保全対策等も全く実施されていないのが現状である。また、原産国とされる中国ではセンリゴマの生育地は報告されておらず、その起源や分類学上の位置付けにも不明瞭な点がある。本研究では、センリゴマの分類学上の位置付けと保全上の価値を明らかにすること、残存集団が保持する遺伝的多様性を評価することを目的とし、系統解析ならびに遺伝的多様性解析を行った。

ITS領域の塩基配列に基づく系統解析を行った結果、センリゴマは他のRehmannia属植物6種とは明瞭に異なる塩基配列を有しており、他のRehmannia属植物とは明らかに別種であることが示された。また、AFLPマーカーによる解析から、比較的高い遺伝的多様性を有していることも示唆された。これらの結果から、現存するセンリゴマは極めて希少な植物であり、高い保全上の価値を有すると言える。今後、センリゴマの保全上の価値を関係者に周知すると同時に、現存個体とその遺伝的多様性の保全を目的とした包括的な保全対策を至急構築していく必要がある。


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