| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-112

千葉県柏市こんぶくろ池周辺における希少草本類の生育環境特性と保全に関する研究

*白川一代(東大院・新領域), 福田健二(東大院・新領域)

千葉県柏市北部に位置するこんぶくろ池は,関東ローム層中に形成された地下水が台地上で湧出した珍しいタイプの湧水池である.その周りには,約12.5haのまとまった平地林が広がっており,千葉県RDB記載の保護植物が26種生育している.近年,つくばエクスプレスの開通と周辺の宅地化などの影響により,こんぶくろ池への排水の混入や水位の変化,それに伴う植生の変化が危惧されており,柏市は今後こんぶくろ池周辺を『こんぶくろ池自然博物公園』として整備し,植物の保全・管理を行なっていく計画を打ち出している.湿地特有の植生の保全計画を立てる上で,個々の植物種に適した生育環境の把握は欠かせないが,こんぶくろ池とその周辺の樹林地では,希少植物種の生育環境の把握や保全に必要な整備手法は十分に明らかにされていない.そこで,希少草本植物の生育環境を明らかにするために,千葉県RDB種で現地に多数生育しているコバギボウシとキンランについて,生育特性と生育環境を調査した.2008年と2009年にこんぶくろ池周辺の湿地と樹林地に調査区を設置し,毎木調査と下層植生調査を行った.毎木調査は冬季に行い,胸高直径1cm以上の全個体の胸高直径と樹高を測定した.下層植生は9月に全植物種の被度と最大自然高を記録した.調査区を2m×2mの小区画に分割し,各区画の土壌環境と光環境を測定した.

その結果,コバギボウシの生育している場所では多様度指数が高かった.また,コバギボウシは土壌含水率が約60~90%で相対照度が約5~50%の広範囲に生育していたが,相対照度が約20%付近の場所で着花個体が見られること,キンランは林床の平均相対照度が約25%のスギ・コナラが優占する混交林の下層で,歩道沿いなどの比較的開けた環境に生育していることが示された.


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