| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-121

都市域の蝶類相の変化とその生態的要因〜世田谷区、杉並区、練馬区を例に〜

*前角達彦(東大・農), 須田真一(東大院・農), 角谷拓(国環研), 鷲谷いづみ(東大院・農)

人口が集中する都市域では野生生物の生息・生育に適した場所が限られている。しかし、チョウ類は環境に応じて比較的幅広く分布しており、公園緑地や庭などで普通に観察することができる。また、一部の種では近年の温暖化やヒートアイランド化の影響による分布域の変化が指摘されている。本研究では、東京都の世田谷区、杉並区、練馬区の3区の1950年代以前と1980年代以降の蝶類相を比較し、種ごとの生態的特性が種の消失・残存・新規記録にどのように影響を与えているかを評価した。

文献や個人の収集データから抽出したチョウ類の採集・目撃の記録を、上記の2つの年代の蝶類相として比較したところ、1化性の種(P < 0.01)と食餌植物の種数が少ない種(P < 0.05)、食餌植物の都市域での利用(園芸品種・農作物)のない種(P < 0.01)が有意に高い消失率(1950年代以前に見られたが1980年代以降記録のない種の割合)を示した。特に、1化性でかつ食餌植物の都市域での利用のない種のうち、現在でも確実に定着しているものはミドリヒョウモンのみであった。一方、年2化性以上でかつ食餌植物の都市域での利用がある種はすべて残存していた。新規記録種は6種すべてが年2化性以上、4種で園芸植物の利用があり、残存種と同様の傾向が認められた。さらに、トラフシジミを除く5種は近年分布域を北上させている種あるいは人為的な放チョウにより分布域を拡大している種であった。

これらの結果から、都市域の蝶類の消失・残存には種の化性と食餌植物の存在が大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、1980年代以降の種の新たな記録・定着には、ヒートアイランド化や温暖化の影響があることが推測されるが、生態的特性に応じてその影響が大きく異なることが示唆された。


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